ガラスの告白
「ううん。私は同じクラスの友達と話していたら、遅くなっちゃって」

「そうなんだ」

「浩(ヒロシ)君はねっ、部活の帰り。偶然会ってバスが来るのを待っててくれただけっ」

 後に付け加えられた言葉が、ほんの少しだけ、焦り急ぐように聞こえます。
 初めて聞く名前に、先ほどの彼のことだろうと納得していました。

 やはり異性といたところを、見られたことを気にしているのか、問いかけてもいない一緒にいた理由に、返事ができないでいました。

 要の手には、はずされた桃色の手袋を、ぎゅっと、握りしめています。
 時男はそれをただ見つめ、何か当たり障りの無い言葉をと、頭の中で探していました。

(どのような会話をすればいいのだろう。秀ちゃんのお母さんから聞いた、職業訓練校の会話でも切り出そうか)

 時男は考え込むあまり、自身の手を無意識のまま、胸元のコートのボタン掛けに当てていました。
 切れ直した紐を指でつまむと、ねじるようにいじっています。
 要はその仕草を横目で確認すると、時男の反応を気にするように注意しました。

「……紐。切れちゃうよ……とっ君は、昔から胸元をいじる癖があるから」

「えっ」

 時男は乱暴な指先の力を緩めると、すぐに自身の胸元を見ました。
 要に言われ、無意識にそのような行為をしていることに、初めて気づかされます。
 当初切れてしまった切っ掛けも、自らの行いからだと知るのでした。
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