だからアナタに殺されたい。
まるで吸血鬼の存在自体が罪である、と言われているような光景に、治療を続ける指に嫌な力が込められてしまう。
危険な吸血鬼は禁断症状に陥った吸血鬼だけだ。
その他の吸血鬼は人間と何も変わらない。
それなのに全ての吸血鬼が悪者のようにされているだなんて。
「はい、できたわよ」
ローゼルの右腕に薬を塗り終え、顔を上げる。
すると、こちらをまっすぐと見つめていたローゼルと目が合った。
艶やか綺麗な黒色の髪がローゼルの綺麗な紫の瞳に少しだけかかっている。
アメジストのような輝きを放つその瞳は、いつもまっすぐで、私を今のように捉えて離さなかった。
「エレノア、顔色が悪い…。大丈夫ですか?」
私の小さな変化も見逃さず、もう一度、いつもの無表情のまま気遣うローゼルに、心臓が小さく跳ねる。
「…大丈夫よ。気にしないで」
だが、私はその心臓の変化だけは悟られないよう、いつも通り気丈に笑った。
ローゼルが信頼を寄せる、エレノアとして。
そんな私にローゼルは何かを思案するように黙ってしまった。
そして、数秒後、ゆっくりと口を開いた。
「怖いなら俺に言ってください、エレノア。俺がアナタを守ります。いつまでも」
無表情からローゼルがふわりと笑う。
彫刻のように美しい彼は、笑うと幻のように儚かった。
ローゼルの言葉が私の心臓を忙しなくさせる。
だが、ローゼルに他意などない。
ローゼルは最初、今のように私に心を開かず、信頼も寄せず、毎日傷だらけで、まるで手負の猫のようだった。
しかし、少しずつ私たちの距離は縮まり、今のような関係を築けていた。