だからアナタに殺されたい。
結局一度血の味、快楽を覚えてしまった吸血鬼は、中毒症状を患っている状態と変わらず、血を求める本能にじわじわと支配されるようになる。
やがて禁断症状に陥らないための血の必要量が増えていき、理性が徐々に崩壊していく。
そうしてどんなに摂取しても足りなくなり、禁断症状に陥るのだ。
しかしこの中毒症状を抑える方法がどうやら一つだけあるらしかった。
「それは血を求める本能をも上回るもので満たされることです」
「上回るもの…?」
「ええ」
首を傾げる私に、医師がこくりとゆっくりと頷く。
「それは、愛です。殺せないほど愛している相手から愛され、満たされることが、症状を抑える唯一の手段になります。ですが、エレノアさんがここにいるということは…」
医師はそこまで言うと、気まずそうに視線を伏せた。
その様子に、最後まで言われなくても、またわかってしまった。
愛で満たされていれば、中毒症状は抑えられる。
つまり中毒症状が抑えられていない私はその愛で満たされていないのだ。
わかっていた、そんなこと。
私はローゼルに愛されていない。
あくまで恩人として、丁寧に扱われていただけだ、と。