だからアナタに殺されたい。



「アナタが言った通り、吸血鬼は本能を抑えられず、相手が死ぬまで血を摂取し続けます。ですが、そうはならない場合が一つだけあるんです」



そこで一度言葉を区切り、じっと医師が私を見つめる。
その瞳には、私を憐れむものがある。

何故…?

医師の視線に疑問を抱いていると、医師はやっと暗い声で言葉を紡いだ。



「それは相手が愛する人だった場合です。血を求める本能よりも、相手を殺したくないという理性が勝った場合にのみ、血を求める本能は抑えられます」

「…」



だから、か。
医師の説明に、私は妙に納得した。

医師は確かに言った。
血を一度吸ってしまったが最後。吸血鬼はその本能を抑えられず、相手が死ぬでその血を喰らい続ける、と。

だが、私がそうならなかったのは、私がローゼルの死よりも生を望んだから。
愛しているからこそ、そうなったのだ。



「エレノアさんのような吸血鬼は稀にいるんです。この施設にも、何人かいらっしゃいます。それでも、本能を自力で抑えられた吸血鬼は、その後も苦しむ運命なのです」



そこから続いた医師の話はこうだった。



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