だからアナタに殺されたい。
12.消えた聖女
sideローゼル
帝国の聖女が、俺だけを見て、俺だけを求める。
聖女の翼はゆっくりと羽を失い、少しずつ俺へと堕ちてきてくれていた。
エレノアは俺に…いや、俺の血に夢中だ。
それでもいい。
あのエレノアが例え捕食目的であっても、俺を必死に求めてくれるのなら、俺はそれでもよかった。
エレノアの清廉な黄金の瞳が、血を求める時だけ、とろけそうなほど甘いものへと変わる。
誰にでも慈悲深い笑みを浮かべる美しい顔には、抗えぬ欲望が浮かび、苦しそうだった。
頬を紅潮させ、必死に俺に舌を這わせるエレノアの姿は、扇情的で、いつも俺を煽った。
エレノアのあの姿を見られるのは、俺だけだ。
エレノアは血を吸い終わった後、いつも泣きながら言う。
『アナタを殺したくない。でも殺してしまいそうで怖い』と。
その姿がどれほど俺の胸を甘さで痺れさせたことか。
殺して欲しかった。
エレノアの手で終えられるのなら、俺の世界の最期がエレノアならどんなにいいだろう、といつも甘い夢をみていた。
だから俺は何度も何度もエレノアに、『アナタになら殺されたい』と言った。
俺はエレノアなしでは生きられない。
それはきっとエレノアも一緒だろう。
そうなるように、俺が仕向けたのだ。