『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

料理を考えなきゃ。
後は販路。値段はどうでもいい。
相手は国民全員なのだから。売れれば学園に通える金額は手に入る。
「ユニアミ?どうしたの。泣かないで。」
気づいたら目から涙が零れていた。
あぁ、この世界ではまだ7歳。
シナリオの事を考えていたから、気持ちは大人の感覚だった。
大学に通いながら、小さな喫茶店やコンビニのバイトをして。乙女ゲームにハマった。
夢はいつか自分の店を持つこと。だった。
記憶はそこで途切れている。
死んだんだ。夢も叶わず。
優しく抱き寄せる兄に甘え、私は静かに泣いた。
「そろそろ朝ご飯の時間だ、落ち着いた?帰ろう?」
言い訳が思い浮かばないのだろう。
私も説明が出来ない。涙を拭い。
兄が先に立ちあがって、私に手を差し伸べる。
手を取って、そのまま繋いで歩く。
家までの帰り道に、少しだけ薬草を採り。

「今日は、母さんに教えてもらった場所にユニアミを連れて行ったから。これだけ。」
お母さんは優しく微笑み。
「あら、もうそんな季節なのね。寒い季節も近いわ。」
ここにも四季がある。呼び方は違うけれど。
あぁ、季節で言うと秋なんだ。間に合うだろうか。
記憶が正しければ春頃。
そう雪解けの祭りの後、喜びの後の悲劇として描かれていた。

朝ご飯を終え、片づけや母の仕事を手伝い。
お昼に教会に向かった。
パンと飲み物を受け取り。今日は広い庭に一人。
飲み物は綺麗な水。
井戸や川を神殿の聖女見習いが巡り、癒していくのだ。
聖法の一つ。水魔法でも使えれば。
「ステータスオープン。」
透明の画面。ラノベとかだと見えるのは自分だけ。
大丈夫だろうか。周りを見渡すけれど、私を気にする人などいなかった。
種が成長しなかった場合、ううん。成長した後こそライオネル様の助けが必要になる。
アイテムボックスの中には、イベントで使用した残り。
蒔いた種と同量の残り。
数日で芽が出なかった場合は失敗と考え、他の候補地を探す。
芽が出たら周辺に群生したと思わせるように分散して植える。
葉はジュースを試作しよう。
実は乾燥させて、薬に出来ないか。お母さんに見せてみよう。
それも芽が出た後。偶然に拾ったのだと言って。
花は何に使えるだろうか。
私が救える命は。


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