『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

④結:願うのは


夜ご飯の準備中、王城からの使いが来て母に大金を渡した。
名目は、神殿で長い間行方不明だった貴重な資料を偶然発見した私に対する褒美として渡すと。
共に運ばれてきたのは豪華な食材、普段手に入らない果物も受け取った。
家族との幸せな時間。
危惧していた兄の通学の為の費用も確保できた。
十分するほどの金額。
学園に通う為の費用、それは普通の家庭なら、苦にもならないならない金額。
父を亡くし、母の薬剤だけでは生活するだけで精一杯。
余裕などない。物語のような特例など、限られた枠。
それからは順調だった。
王家や神殿との繋がりが出来たから。

種は芽吹き、魔力が残った地だからか思った以上の繁殖。
母に見せた実は、神殿に報告され薬剤に携わる者が全て招集されて研究されることになった。
冒険者に依頼が出され、私が植えた薬草が発見され。
順調に病の蔓延を阻止する体制が整っていった。
薬草の増殖。服薬方法。
母に協力する形で、私はレシピを作っていく。
害獣ヤバト。鳩に似た繁殖力の高い魔獣。
定期的に依頼の出ていて、昔、父が持って帰っては喜んだ懐かしい思い出。
梅肉に近い果物と鶏肉、薬草を巻いて揚げる。
それは多くの食堂で提供され、簡易な串揚げとして露店でも安価で売られ。
食べ歩きとして人気となり、遠い地にまで調理方法が伝わる。
より多くの人が、病には罹らないだろう。
花は揚げ物として、安価では満足できない層に流行り。
食べることが出来ない人には、病が出たとしても薬が提供される。
子ども達にはジュースとして。
病は、ライオネル様が神官になった後にも蔓延しなかった。
未然に防いだのだ。
大勢が救われた。
未来が変わる。
それはきっと良いことだと思いたい。だから。
「ライオネル様、お願いがあるのです。」
私は学園の食堂に、他の料理のレシピを提案したいと申し出た。
許可が出れば、学園にレシピを届ける事。
寮に入った兄に会いたいと、正直に言った。
まだ私は子どもだから。
そう。学園の裏庭。
そこに侵入して、ケガした魔物に治療を施そうとしたのがモブの私だった。
知識もなく。母の薬剤を持ち出し、与えた魔物が狂暴化して大勢を殺害するのだ。
私には薬剤の知識。
そして魔物を直すのではなく、殺す薬が何かを知っている。
兄を殺される前に殺す。
それが私の役目。


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