『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

学園にレシピを届け、裏庭に向かうと。
そこに居たのは、同じ年頃の少女。
魔物の世話をしていた。
芽生えたのは殺意。
その位置は私。
私を補うように登場した人物。
「誰にも言わないで。この子は悪いことをしていない。ケガをしてるの。お願い。」
「あなた、名前は?」
「ガーネット。」
この世界には珍しい双子の姉妹がいると聞いた。
その能力なしの姉。ラノベとかだと人生逆転系。
魔物に好意的な目撃者がいるのは良くない。
私はまだ自力で魔法が使えないから。
恨みも憎しみも受けず、平和に暮らしたいから。
「世話は一人で大変でしょう?特に餌とか。私のお母さんは薬剤を売る仕事をしてるの。治療の薬も持ってくるわ。明日、ここで待ち合わせしましょう。」
「ありがとう!」
微量の毒薬を仕込んで弱らせよう。
薬は家にない環境なら手に入れるのも困難だろう。
暴走する薬を入手できるとは思えない。
焦らずに、世話を手伝うふりして魔物を殺そう。

次の日、手に料理の入った小さな鍋を持って学園の裏庭に向かった。
するとガーネットの叫び声が聞こえ。
魔物の暴走が始まったのかと、現場について目にしたのは。
私は衝撃の場面を目にし、料理を足元に落としてしまった。
「酷い、オリアンヌ。どうして。そんなに私が嫌い?この子には何の罪もないのに。」
あるわ。そいつは近々、私の兄を含め多くの若い学生を襲って無残に殺すの。
死体の損壊も激しく。後々まで語り継がれる悲劇。
その原因を作ったのは。シナリオでは私だった。
オリアンヌは剣を振るい、鞘に納める。
「お姉ちゃん、帰るわよ。」
そう言って無表情で、返り血を浴びた姿なのに凛々しく歩いて去る。
「料理は始末しなさい。」
私の横を通り過ぎ、そう聞こえた。
それはこれに毒が微量、入っていると知ってなのか。
私の中で、聖女と言われたら。彼女、オリアンヌだと答える。
最悪の未来を回避し。


私は学園に入学する。
ゲームでは召喚される聖女はおらず。
王子ユーリスや騎士フリックと、お菓子や料理で仲良くなっても王子の婚約者は邪魔などしなかった。
回避した未来。変わってしまった未来。
けれど魔王の復活は予告されたまま。勇者も見つかり。
シナリオには居なかった魔法使いマリー。
彼女は、この世界の住人には見えなかった。
召喚されたなら、聖女の扱いだろう。
私が許可された、月に一度の礼拝堂で女神レイラリュシエンヌ様に祈りを捧げる機会。
彼女、魔法使いマリーが、シナリオを知っているのだろう行為。
足台の隠し扉を開け、愕然とするのを見た。
そう、時は来る。

「ユニアミ、僕は勇者と共に行くべきか迷っている。」
仲良くなった王子ユーリス。
彼の弱さは当然のもの。
「私も行くわ。大丈夫、だって常に共に居たフリックも行くのよ。」
そう行かなきゃ。
この世界を救うのは私。




to be continued
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