「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」



 次の日、滝本が会社のロビーを歩いていると、ガラスの向こう、前庭から、ガラスに張り付くようにして、大きく手を振っている男がいた。

 誰にだ?
と振り返ったが、みんな、気にせず、どんどん歩いていっている。

 まさか、俺にか?
 めちゃくちゃ親しげなんだが……。

 そのガタイのいい男は、いまいち仲のよくない同期、吉浦(よしうら)だった。

 普段は支社にいるので、あまり顔を合わせることはない。

 吉浦はロビーに入ると、まっすぐこちらに向かい、やってくる。

「滝本っ!」

 ……やっぱり、俺なのか。

 元ラグビー部な彼は、ガッと大きな手で滝本の手を握った。

「聞いたぞ!
 略奪愛!」

「え」

 話を聞いてみると、吉浦の友だちが聖一とも親しいようだった。

「お前にそんな人間らしい情熱があったとは!
 機械かと思ってた!

 その話、詳しく聞かせてくれよっ。
 今夜、一緒に呑みに行こうっ!」

 わしっ、と吉浦が肩を抱いてくる。

 この体育会系のノリが苦手なんだが……。

 あと、声がデカい。

 みんな振り返ってるから……と思いながらも、引きずられて、その夜は二人手で呑みに行った。




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