「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「缶詰工場のインド人の話より、課長の話をしなさいよっ」
あ、そこからもう聞かれてたんですね、と思ったとき、トレーを手に側を通っていた麻沙子の同期の平井弘章が、
「えっ?
このカレー、缶詰工場でインド人が作ってたの?」
と呟きながら去っていった。
「カオスですね」
「あんたが作り出したカオスよっ」
と悦子に怒られる。
「課長に俺の心をかき乱すなって言われたの?
へー」
悦子に突っ込んで訊かれ、環奈は詳しくしゃべらされていた。
「なにそれ、惚気?」
「そんないいもんじゃないです。
恐ろしかったです」
心をかき乱すなと仕事で叱られる感じに怒られたのだと話す。
「あーあ。
なんでもいいけど、私も言われてみたいわーっ。
俺の心をかき乱すななんて。
あ、そういえば、近くのホテルでハンバーグフェアやってるのよ。
明日行かない? 二人とも」
麻沙子が、
「いいですけど。
あそこのハンバーグあんまり美味しくないですよね」
と眉をひそめて言う。
「おだまり。
美味しいか美味しくないかは関係ないのよ。
私はハンバーグというものが食べたいのよ」
「あ、わかります、それ」
と環奈は笑う。