「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」



 あのキスのせいで、もう来ないなんてことないだろうな。

 不安になりながら、滝本は自宅に向かっていた。

 静かな住宅街。

 いつもの道なのに、角を曲がるとき、ドキドキした。

 目を(つむ)り、早足で曲がろうとして、なにかを蹴ってしまう。

 にゃーん、と文句を言ったのは黒猫だった。

 ――猫っ!

「すまんっ」
と詫びながら、滝本は、しゃがんで激写する。

 これが環奈の機嫌がなおるかもっ、と思ったのだが。

 猫は猫なので素早く。
 また、飛んで逃げていく猫のしっぽとおしりしか写らなかった。

 しかもムービーになっていたようだ。

 これでは機嫌はとれないか、
と滝本は思ったが、しっぽをふりふり走って逃げる猫の動画は猫好きが狂喜するものだった。

 そんなどたばたのあと、顔を上げると、少し先にある三階建ての自分の家が目に入った。

 灯りがついていて、ホッとする。

 だがすぐに、

 いや、朝、電気をつけっぱなしにしてたのかもっ、と不安になる。

 ――いやいや。
 待て。

 あいつのことだ。

 自動で電気つくようにしようとか言っていたから、知らない間に、なにかとりつけたのかもしれんっ!

 そんな風に滝本の妄想は炸裂していたが、環奈は普通にリビングでテレビを見ていた。

 滝本が後ろに立つと振り向いて言う。

「あ、課長。
 お帰りなさい。

 いろんなものの味がするポテト食べますか?」

「……そこでいると言うと思うのか」
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