「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


 歩く道道、お散歩に出かけるちょうどいい服がなくて困ったのだという話をすると、

「……服を買ってやろうか」
と滝本は言う。

「あー、いえいえ。
 そんなご迷惑を――」
と環奈は固辞したが、

「偽装結婚とはいえ、結婚するのなら、俺の稼ぎもお前のものだろう」
と言い出す。

「……では、私の稼ぎも課長のものですよね」

 まあ、課長のお給料に比べたら、微々たるものではありますが……。

「とりあえず、服代をやろう」
「結構です」

「俺がやると言ってるんだ。
 抵抗するなら、俺の給料をお前の口座に振り込ませるぞ」

「やめてくださいっ」
と話しながら歩いていると、向こうから犬の散歩をしている家族連れが現れた。

「おはようございますー」
と挨拶し合う。

 ほんとうに気持ちのいい朝だ。

 住宅街に突然あるらしいパン屋をどうやって知ったのかと訊いてみると、

「リラクゼーションルームでタウン誌を見てたら載ってた」
と言う。

「課長、タウン誌見て、ここのランチは美味しそうだとかチェックするんですかっ?」

「……あれば見るだろ。
 ラーメン屋の特集なんかよく見る。

 お前のイメージの中の俺は休憩中、一体、なにを見てるんだ?」

「……え。
 書類とか?」

 それ、休憩になってないだろ、と言われてしまった。

 自宅でくつろぐ滝本も何度も見ているはずなのに、何故かくつろいでいるイメージがなかった。
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