「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
デパートの上の階の片隅。
白いパーテーションで仕切られたしょぼいブースの中に、ひょろっとした大学生のような占い師がいた。
彼と向かい合ってパイプ椅子に座った三人は、うっかり、
大丈夫かな、この占い師、
という顔をしてしまった。
だが、慣れているのか、彼は気にしている風にもない。
「あのっ」
と悦子が意を決したように口を開いた。
「表にあったチラシの割引券使ってもいいですかっ?」
ここにも割引券があった。
しかも、外の長机に大量に、と環奈は後ろを振り返る。
「いいですよー。
えーと、三人とも恋占いでよろしいですか?」
「すごいっ。
何故、わかったんですかっ?」
と麻沙子が身を乗り出したが。
……いや、女三人で押しかけたら、大抵そうなんじゃ、と環奈は思う。
まあ、私は別に恋占いしたいわけではないんですが。
っていうか、そもそも、占いしたいわけでもないんですけど……。
「真ん中のショートカットの方は、最近、年下の男性と別れられましたよね?」
悦子が、
「なんでわかるんですかっ、先生っ」
と驚く。
さっきまで、ショボい大学生だな、みたいな顔してたのに、いきなり、先生になってる……。
「あっ、いえっ。
すみません。
実は、僕、たまたま、あなたがその彼と別れてる横、通ったんですよね。
その先のショッピングモールの本屋の前」
と占い師は苦笑いする。
「えっ?
そうなんですかっ。
気づきませんでした」
と言う悦子に、環奈は、
……その時点では知り合いではないので気づかないのでは、と思っていたが、占い師は、
「僕、影薄いんで」
と言って、はは、と頼りなげな感じに笑う。
でも、なんか人の良さそうな人だな、と環奈は思った。
万が一、彼の言うことが外れてても、誤魔化そう、と心に誓う。