「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 



 デパートの上の階の片隅。

 白いパーテーションで仕切られたしょぼいブースの中に、ひょろっとした大学生のような占い師がいた。

 彼と向かい合ってパイプ椅子に座った三人は、うっかり、

 大丈夫かな、この占い師、
という顔をしてしまった。

 だが、慣れているのか、彼は気にしている風にもない。

「あのっ」
と悦子が意を決したように口を開いた。

「表にあったチラシの割引券使ってもいいですかっ?」

 ここにも割引券があった。

 しかも、外の長机に大量に、と環奈は後ろを振り返る。

「いいですよー。
 えーと、三人とも恋占いでよろしいですか?」

「すごいっ。
 何故、わかったんですかっ?」
と麻沙子が身を乗り出したが。

 ……いや、女三人で押しかけたら、大抵そうなんじゃ、と環奈は思う。

 まあ、私は別に恋占いしたいわけではないんですが。

 っていうか、そもそも、占いしたいわけでもないんですけど……。

「真ん中のショートカットの方は、最近、年下の男性と別れられましたよね?」

 悦子が、
「なんでわかるんですかっ、先生っ」
と驚く。

 さっきまで、ショボい大学生だな、みたいな顔してたのに、いきなり、先生になってる……。

「あっ、いえっ。
 すみません。

 実は、僕、たまたま、あなたがその彼と別れてる横、通ったんですよね。

 その先のショッピングモールの本屋の前」
と占い師は苦笑いする。

「えっ?
 そうなんですかっ。
 気づきませんでした」
と言う悦子に、環奈は、

 ……その時点では知り合いではないので気づかないのでは、と思っていたが、占い師は、

「僕、影薄いんで」
と言って、はは、と頼りなげな感じに笑う。

 でも、なんか人の良さそうな人だな、と環奈は思った。

 万が一、彼の言うことが外れてても、誤魔化そう、と心に誓う。
< 216 / 328 >

この作品をシェア

pagetop