「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「なんか言うこと、可もなく不可もなくって感じでしたね~」
ブースを出ながら言う麻沙子に、悦子は、
「単にあんたの未来が可もなく不可もなくってだけでしょ」
と言っていた。
「まあ、自分でネタバラシしたのはすごいなと思いましたけど」
悦子さんが別れるところを見たって、と麻沙子は言う。
「そうね。
いい人よね。
あと大学生かと思ったけど、違うのね」
ん? と麻沙子と環奈は悦子を見た。
なんかウキウキしている……。
まさか、と環奈は麻沙子と目を合わせた。
「平井くんキッカケで年下に目覚めたのかしら」
「人の好みって変わっていくものなんですね」
そこで、環奈は気がついた。
「あ、忘れ物……。
天使の財布を忘れました」
「なにそれ、早くとって来なさいよ」
いつもなら、天使の財布ってなによと鋭く突っ込んでくる悦子が突っ込んでこない。
気が他所を向いているようだ。
「……悦子さん、とりに行かれますか?」
気を利かせて環奈は言ってみた。
悦子は迷い、
「いや――
いい感じに去ったから、このまま去るわ」
と言う。
それはなんとなくわかるな、と思う。
爽やかに、また来ます、と別れたばかりなのに。
今、戻ったら、なんとなくマヌケな感じがするからだろう。