「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
新しい人生の幕開けです
「今日はいいことしたな」
「あ、私が言おうと思ってたんですよ、それっ」
環奈と滝本は二人並んで酒を呑んでいた。
今日は隠れ家カフェではない。
ホテルの最上階にあるスカイラウンジだ。
隠れ家カフェはお互いのプライベート空間なので、あそこでは話はしないようにしている。
じゃあ、同じ店に行くなと言われそうだが、好みが似ているので仕方がない。
いや、好みが同じだから、こうして、ある意味、急接近したわけなのだが――。
夜景を見つめ、黙る環奈に滝本が言う。
「なんだ?
ほんとはあいつが好きだったのか?」
「いいえ。
ただ、いきなり、将来こうなるのかな? と子どもの頃から思っていたレールから外れてしまったので」
ふん、と滝本は鼻を鳴らす。
「俺なんていつも未来は見えていない。
まさか、お前と偽装結婚することになるなんてな」
……いや、あなたが言い出したんですよ、と環奈は思っていた。