「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

 


 滝本に言われた通り、牛乳を買った環奈は滝本の家に向かっていた。

 猫、今日もいないな~と思いながら。

 すると、滝本の家の玄関前、木々の向こうに人影が見えた。

 玄関前はちょっと高くなっているからだ。

 暗がりの中、その人影を窺いながら、環奈は思う。

 セールスの人かな。

 保険とか、みかんとか、りんごとか。

 昔はムショ帰りだとか言って、ゴム紐を売りつけてくる人とかいたって、おばあちゃん言ってたけど。

 ゴム紐、なににするんだろうな。

 こちとら、ムショ帰りで困ってるんでい、とか言われたら買うのかな。

 門の前まで来た環奈は、振り返り、こちらを見た人を見ながら思った。

 ……いや、こんなハットに手袋に、高そうな鞄持ったゴージャスなムショ帰りの人はいない。

「あら、あなた。
 こんなところで会ってしまって。

 正月におめかしして会うつもりだったのに」

 いきなり相手はそう言ってきた。

「……卵のお母様?」

 牛丼には卵というしつけ(?)の話を思い出し、心のままに呟きかけた環奈は慌てて、挨拶する。
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