「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「お母様は、いつも、あの格好で牛丼屋に行かれてるわけですね」
「……ああ。
とてつもなく浮いてる」
滝本が帰ったあと、わらびもちを二人で向かい合って食べていた。
「あの人、TPOとか考えないから」
「でもまあ、結婚式帰りとか、葬式帰りの人も牛丼屋そのまま行くかもしれませんしね。
美味しいですね、このわらびもち。
やわやわですよ。
きなこも香ばしくて」
「すぐ食べないと美味しくないけどな」
それでわざわざ持ってこられたんですね、と言ったあとで、環奈は言った。
「お正月、やっぱりホテルにするそうです。
なんでも、お祖父様のお宅が雨漏りで工事するそうで」
「ああ、古い家だからな」
その言葉に、一瞬、日本昔話な家が浮かんだが、おそらく、由緒ある邸宅でちょっとガタが来ているのだろう。
「やっぱり私も呼ばれてしまいました。
まだ嫁じゃないのに」
「当然だろ」
「お手伝いできるよう、一応、エプロンも新調したんですが」
「ホテルでなに手伝うつもりだ。
迷惑だからやめろ」
いや、家だと思ってたからですよ。