婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「あの! おふたり……もしかして付き合っているんですか?」
「いや、結婚している。蕗は俺の妻だから」
さらりと答える彼に目を見開いたのは私だけではなかった。
瞬時に江口さんの表情が険しくなって強ばっていく。
対照的に、きゃあっとふたりの女性たちは悲鳴に似た高い声を上げる。
「妻って……! 向さん、結婚されていたんですか!?」
「え、いつですか? 嘘、知らなかった! ずっとお付き合いされていたんですか?」
興奮したふたりの女性たちから矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「俺が強く彼女に惹かれて、やっと結婚を了承してもらったんだ。会社にはこれから報告するから今はまだ内密にしてもらえたら助かる……本当に大切な人だから、不用意な噂とかで傷つけたくないんだ」
にこやかにそう言って、絡めた指先を軽く持ち上げて引っ張る彼はとんでもない策士だ。
女性たちに見せつけるように私に注ぐ愛情溢れる眼差しと甘い声は大方、無責任な噂が流れるのを阻止するための演技だ。
わかっていても鼓動が速まり、同時に切ない痛みが心を浸食する。
「わあ、素敵! ねえ、江口さん」
「……そうね、捜していた運命の人に巡り会えたのね、おめでとう」
同僚の呼びかけに、江口さんは口元だけで綺麗な笑みを形作る。
「ああ……やっとね。ありがとう」
わずかな間を置いて、琉生さんが先ほどまでとは違うやや硬い声で返答する。
一瞬の小さな変化だったが、どこか不自然な江口さんの言い回しが引っかかった。
「いや、結婚している。蕗は俺の妻だから」
さらりと答える彼に目を見開いたのは私だけではなかった。
瞬時に江口さんの表情が険しくなって強ばっていく。
対照的に、きゃあっとふたりの女性たちは悲鳴に似た高い声を上げる。
「妻って……! 向さん、結婚されていたんですか!?」
「え、いつですか? 嘘、知らなかった! ずっとお付き合いされていたんですか?」
興奮したふたりの女性たちから矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「俺が強く彼女に惹かれて、やっと結婚を了承してもらったんだ。会社にはこれから報告するから今はまだ内密にしてもらえたら助かる……本当に大切な人だから、不用意な噂とかで傷つけたくないんだ」
にこやかにそう言って、絡めた指先を軽く持ち上げて引っ張る彼はとんでもない策士だ。
女性たちに見せつけるように私に注ぐ愛情溢れる眼差しと甘い声は大方、無責任な噂が流れるのを阻止するための演技だ。
わかっていても鼓動が速まり、同時に切ない痛みが心を浸食する。
「わあ、素敵! ねえ、江口さん」
「……そうね、捜していた運命の人に巡り会えたのね、おめでとう」
同僚の呼びかけに、江口さんは口元だけで綺麗な笑みを形作る。
「ああ……やっとね。ありがとう」
わずかな間を置いて、琉生さんが先ほどまでとは違うやや硬い声で返答する。
一瞬の小さな変化だったが、どこか不自然な江口さんの言い回しが引っかかった。