婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「電車が遅れていて、帰宅が遅くなってごめん」


「ううん、大丈夫。あの、今日は電車だったの?」
 

運転が好きな彼は気分転換になるからと普段の外出にもよく車を利用している。

珍しいと口にしかけたとき、ふと瑛斗のメッセージが頭をよぎった。


「ああ……うん、同僚に教えてもらった菓子店に寄りたかったから。マカロンが美味しいって聞いてお土産に買ってきた」
 

そう言って、彼はもうひとつの紙袋を視線で示す。

ほんの少し返答がいつもより歯切れが悪いと考えてしまうのは気にしすぎだろうか。


「そう……ありがとう。ほかには、どこにも行かなかったの?」
 

ドクンドクンとうるさく鳴り響く鼓動を抑えるように、胸元をもう片方の手でギュッと押さえる。
 
こんな尋ね方は卑怯だ。

わかっているけれど、直接的に聞く勇気がどうしても持てずに視線を下げて問いかける。


「本屋と以前から少し興味があった店に寄った」
 

ためらいもせず答える琉生さんは嘘をついているようには見えない。
 
どう反応すればいいか迷い、小さくうなずく。


「蕗、どうかした?」
 

胸の内にあるわだかまりをどう整理すればよいか思案していたところ、逆に問われて焦る。
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