婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「あの、最近以前より忙しいみたいだから……その、なにか結婚の件で会社から言われたりしている?」


「俺はないが……蕗、誰かになにか言われたのか?」
 

表情をサッと真剣なものに変化させた彼が、口元に運んでいた手を下に下ろし、尋ねる。


「ううん。琉生さんが色々配慮してくれているおかげで大丈夫。でも私は守ってもらってばかりで……迷惑をかけているんじゃないかと思って」


「まさか。ああ、強いて言えばそうだな……近々少し相談したい件がある」


「どんな話? 実家の件なら私の一存では動かせないから……」


「蕗の実家? いや、違う。まだ準備できていないし、今すぐじゃなくていい。ほら、せっかく蕗が食事の準備をしてくれたし食べよう」
 

そう言って、私の指をほどいた彼の指を逆に握りしめて引き留める。


「待って、大事な話でしょう? 食事なんて後からで全然……」


「急ぐものじゃないから大丈夫。蕗、明日は早番だろ? お互いが休みの日にしよう」
 

琉生さんはそれ以上は話すつもりがないようで、あっさり断わられた。

そのままキッチンに足を進める彼の後を追いながら、もう一度声をかけた。


「琉生さん、でもっ……」


「ああ、蕗。これお土産」
 

くるりと振り返った彼が、ダイニングテーブルに置いていた薄い小さな袋を手に取って、私に差し出す。
< 150 / 185 >

この作品をシェア

pagetop