婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
素直に甘えたり、弱さを吐き出したりできない私を彼は受け止め、自然に心を柔らかくほぐしてくれた。

こぼれ落ちる弱音や情けなさ、抱える葛藤を彼には素直に吐き出せた。

母の夢を純粋に応援し、自分も前向きでいられたのは彼のおかげだった。

だから、いつかお礼をしたかった。

けれど彼はある日突然、来なくなってしまった。

常連となりかけていた母子だったけれど、彼らの詳細については母も知らず、会えなくなってしまった。

ふたりでいつも話していたカウンター席の端を見るたびによみがえる、小さな懐かしくも儚い思い出をできるかぎり守りたい。

いつか彼が来店してくれるという期待も捨てたくない。

その後も菫と相談を続けていたが、名案は浮かばず、結局、来週末の休みに私がカフェの手伝いに行く際、より詳しい事情を母から聞いてくると告げて、通話を終えた。
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