婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
俺にとって蕗は理想など関係なく、かけがえのない女性だ。
 
俺は仕事柄、自宅を空ける日が多い。

動画に出演するようになってからはさらに気をつけてセキュリティの高い住居を選んでいる。

過度に気にしすぎるのはよくないとわかっているが、最近では自宅周辺で声をかけられる機会も増えてきた。

大事な蕗が安心して暮らせる毎日を守るため、もう少し蕗の実家にも職場にも近い場所に引っ越したほうがよいのではと、結婚後、強く思うようになった。

この付近で家業関連のマンションは今の住居以外にはないため、不動産業を営む友人に依頼していた。

何度かやりとりを繰り返し、こちらの希望を事細やかに伝えていた。

決まった休みが取れない俺に、友人は臨機応変に対応してくれていて助かっていた。

今日はその友人から新居候補の家をいくつか紹介してもらっていた。

蕗に引っ越しの件を打ち明けようか迷ってはいたが、もっと話を詰めて候補を絞り込んでから相談しようと思い、今日のところは話さなかった。

さっき届いたメッセージと電話もその友人からのものだ。

なにかに思い詰めていた彼女の不安を煽ってしまった。

こんな事態になるなら最初から隠さず話しておけば良かったと後悔してももう遅い。

一刻も早く蕗の憂いの要因を突き詰めるとともに、まずは誤解を解かなければいけない。
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