婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「余計な心配をしなくても、向くんはあなたの実家の件も含め全部を受け止める覚悟でいたはずよ。私の小細工なんてとっくに見破られていたから」


「それは、どういう……?」


「大切な妻に余計なアドバイスは不要だって、この間はっきり言われたの。誰にでも当たり障りなく接してきた向くんがあんなに感情をむき出しにする姿は初めて見たわ。どれだけあなたを大事にしているか逆に思い知らされた、完敗よ」
 

どうやら琉生さんは江口さんと私の間の出来事を大まかに察していて、江口さんに釘をさしたようだ。


「どうして……」


「柄にもない、みっともない真似をして……悪かったわ」
 

ささやくような謝罪が耳に届き、私は小さく首を横に振る。


「江口さんの指摘のおかげで私は色々な、自分が見えていなかった事柄に気づくことができました。悩みはしましたが今となっては必要だったと思っています」


「……本当にそういうお人よしなところ、どうかと思うわ。私は向くんよりもっと素敵な男性を探すから、ご心配なく」
 

じゃあね、と去って行く江口さんの後ろ姿は相変わらず堂々としていた。
 
江口さんと別れて、ずいぶん軽くなった心とますます募る彼への想いを噛みしめた。

まだ時間があり、気持ちが明るくなっていたので今後のお客様対応にいかそうとターミナルのショップ探索をしていた。
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