婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
ひととおり済ませた後、展望デッキが見えるカフェに入り、昨日購入した本を読みながら待とうと決めた。

本を読み進めてしばらく経った頃、周囲のざわつく声が耳に入った。


「あれ、出発遅れるみたい」


「え、なんで?」


「ちょっと、あれ、救急車じゃない?」
 

聞いたばかりの情報に慌てて、バッグからスマートフォンを取り出し運航情報を確認する。

そこには遅延の文字が並んでいた。
 

さらに視線を外に向けたところ、複数台の緊急車両が目に入った。

ただ事ではない様子に驚き、急いでカフェを出て詳しい情報を求めてカウンターへと向かう。
 
運よく途中で勤務中の未歩に出会い、状況を教えてもらった。


「――琉生さんの飛行機で、機長が、急病?」
 

教えてもらった内容をたどたどしく反芻する私に、未歩が心配そうにうなずく。


「まだこちらも詳しい情報を全部把握できていないけれど、私が聞いた限りでは機長の意識はあるみたい。でも操縦は困難らしくて……向さんともうひとりの機長で着陸を試みるそう」


知ったばかりの情報に不安と心配、混乱で呼吸が苦しくなっていく。
 

パイロットは通常、機長と副操縦士、機長ふたりというようにふたり一組で乗務している。

ただ欧州路線など国際線の長距離飛行の場合は機長三人もしくは機長ふたりに副操縦士ひとりの合計三人もしくは四人で乗務し、交互に休憩を挟んでいる。
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