婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「羽田空港にはずいぶん近づいてきている。今からダイバート先を探すよりメディカルエマージェンシーを使おう」
 

筧キャプテンの言葉にうなずき、航空交通管制にメディカルエマージェンシーを伝えた。

これにより当機の着陸、通信も優先される。
 
高度一〇〇〇フィートになるまでにギアダウンし、フラップを出し、気流や航空交通管制とのやりとりなども考えたうえで、着陸のための最終点検をすべて完了させなくてはいけない。
 
これから着陸態勢に入るためチーフ客室乗務員は一旦、大野キャプテンをもうひとりの客室乗務員に任せキャビンに戻った。

その後、しばらくして戻ってきたチーフ客室乗務員は再び大野キャプテンの様子を注意深く観察し、話しかけていた。

さらに機内の異変に気づいた乗客たちが不安を口にし始めて、動揺が広がっていると報告があった。


「向くん、機内アナウンスを」
 

筧キャプテンに促され、俺は小さく深呼吸をして機内アナウンスをオンにする。


「皆様、現在機内にて機長が急病となっております。当機は羽田空港に緊急優先着陸をいたします。着陸につきましては急病者である機長以外の筧機長と副操縦士の私とで安全に行います。どうぞご安心ください」


「……うん、落ち着いたわかりやすいアナウンスだ」


「ありがとうございます」


「さあ、もう少しだ。大野、がんばれ」
 

大野キャプテンと同期という筧キャプテンが声をかける。
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