婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
◇◇◇

「お疲れ様、琉生さん。お帰りなさい……よかった」


「……うん……会えて、よかった」
 

ほんの少し掠れた声で私を胸に閉じ込めた彼の体温に安堵する。

伝えたい事柄も口にしたい気持ちもたくさんあるけれど、今はただ琉生さんを抱きしめたかった。

大きな背中に腕を回す。
 
その状態のまま、彼から飛行中の緊迫した状況について教えてもらった。

話を聞けば聞くほど大変な事態が思い浮かび、私は搭乗していなかったのに緊張や不安、心配がこみ上げる。
 
大変だった、なんてひと言では言い切れない事態を冷静に乗り切ったキャプテンたちや琉生さん、客室乗務員の皆さんは本当にすごいと思う。


「私は緊急事態を空港に着いて教えてもらったんだけど……キャプテン、心配ね……どうかご無事でありますように」


「ああ、本当に」


そう言って、ほんの少し体を離した彼は険しい表情をしていた。


「あの、疲れているのに、ここまで来てもらってごめんなさい」


本当は空港内のどこかの店で待つべきかと思ったのだが、緊急着陸があったせいか、空港内は人が多かった。

報道関係者も到着していて混雑しており、空港の外に出た。

そのうえでわかりやすく、あまり人目につきにくい場所を考えてバスターミナルを選択した。


「いや、まさか空港に来てくれているとは思ってなかったから……驚いたけど会えて嬉しかった。迎えに来てくれてありがとう。蕗のことだから、人目につきにくい場所を考えてくれたんだろう?」
 

率直な発言と私の考えを正確に掬い上げてくれた琉生さんに胸が詰まった。
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