婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「蕗に会えて……肩の力がようやく抜けた気がした。キャプテンは心配だけど、ああ、帰ってきたなって思えた」


「琉生、さん……疲れているのに押しかけて迷惑じゃなかった?」


「まさか、ありえない。さっきも言ったがすごく嬉しい。帰ろう、蕗」
 

私を抱きしめていた腕をほどいた彼が相好を崩し、大きな手を差し出す。

自分の手を重ねた途端、彼がギュッと指を絡めた。

勢いでここまで来たけれど、激務を終えたばかりで疲れている彼に自分の気づいた想いをぶつけるのは気が引けた。

自宅に戻って落ち着いてからにしようかと思案していたところ、彼がタクシー乗り場に向かって歩き出していた。


「琉生、さん?」


「早く帰りたいから今日はタクシーで帰ろう」


「う、うん、それはもちろん……疲れたよね」
 

優しく絡めた指を引かれて足を進めながら答えた私を琉生さんが優しい目で見つめる。


「それもあるけど、蕗の話が聞きたいから」


「えっ……どうして」


「早朝からわざわざ来てくれたのもあるし……なんとなく、蕗の表情を見ればわかる」
 

ずっとなにか言いたい事柄があったんじゃないか、と指摘され目を見開く。

私の心を見透かす彼にやはり敵わないと思う。
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