婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「すみません、お客様!」
 

後輩に急いでカウンターを頼んで、お客様の後ろ姿を追いかける。

幸いにもすぐに気づいていただけて、無事に忘れ物をお届けできた。

父親に手を引かれた女の子に手を振って見送りながら、ふと一週間前の相続手続きを思い出した。
 
琉生さんと私の結婚を渋々ながらも瑛斗が納得したせいか、祖母の遺産についてひかりさんと母の話し合いは驚くほど急速に進んだ。

最終的に、Contrailは私が、そのほかの祖母の生前暮らしていたマンションなどの資産はひかりさんが相続するという結論になった。

もちろんContrailは今のまま母にカフェとして経営してもらい、ゆくゆくは菫と切り盛りしてほしいと伝えた。
 
生前祖母が懇意にしていた男性弁護士が遺言執行人となっており、彼によって遺産分割協議書が作成され、Contrailにて母、ひかりさん、私で署名捺印した。

印鑑登録などすべての手続きが初めてで戸惑う私を、ここでもしっかり寄り添って支えてくれた琉生さんには感謝しかない。
 
手続きを終えてひかりさんが帰った後、男性弁護士が去り際に祖母との話を教えてくれた。


『条件を出されていましたが、お祖母様はきっとあなたが相続されるだろうと予想されていました。いいえ、願っておられたと表現したほうが正しいでしょうかね』


思いがけない話に驚く私に、弁護士は穏やかに続けた。
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