婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「――蕗、お疲れ様。今日、向さんはフライト?」


業務を終えて、未歩とすれ違う。


「うん、バンクーバーから夜に帰ってくる予定」


「パイロットって本当ハードスケジュールよね、体力勝負というか」


「でも琉生さんは私たちもすごいハードスケジュールってこの間言ってたけど」


「確かに……まあ、どんな仕事も皆、大変よね」


うなずきながら、手を振って親友と別れ、駅に向かう。

電車に揺られ、最寄り駅に到着し通いなれた自宅への道を歩く。
 
勤務で多少なりとも体は疲れているけれど、今日は琉生さんに大切な秘密を打ち明けるつもりなので心が浮き立っている。
 
のんびりと片付けを終え、夕食の準備をしていたとき、琉生さんが帰宅した。


「ただいま、蕗。お疲れ様」
 

リビングルームで出迎えたところ、今日の私の勤務を知っていた彼が優しく労ってくれた。


「お帰りなさい、海外フライトお疲れ様」


「ありがとう」
 
ふわりと頬を緩めた琉生さんが長い腕を伸ばし、優しく私を抱きしめた。


「二日ぶり。やっと蕗を抱きしめられた……なにか変わった出来事はなかったか?」
 
緊急着陸の日以降、海外フライトなどで家を長く空けて帰宅した際、琉生さんはこんな風に私を腕に抱いて尋ねるようになった。

今では私たちふたりの大事なやりとりのひとつになっている。
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