婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「今、午後五時半……これから雨らしいけど大丈夫? 雨が降ったら、飛行機揺れない?」


菫がスマートフォンの天気予報の画面を私に見せる。


「乱気流の影響で揺れる場合はあるけれど、パイロットは揺れが少なくなるように高度や経路を常に変更してくださっているそうだから大丈夫」


父に、飛行機はそういう影響をうけにくいところを選んで飛ぶとよく教えてもらった。

飛行機に関わる仕事に就き、安全性もよく理解していて飛行機自体は大好きなのに、乗るのは少々苦手だ。

怖いわけではないのに、緊張しすぎて気分が悪くなってしまう。

父曰く幼い頃に機内の気圧の変化で耳が痛くなったのが原因ではと言われていたが、あまりはっきりしない。


「お姉ちゃんが今から乗る飛行機のパイロットが向さんだったらいいのにね。飛行機を降りたときに偶然通路とかで会って、もう一度話すきっかけができるじゃない」


「そんな都合のいい偶然、ないでしょ。降機後のパイロットはのんびり話をする時間なんてないはずだし、そもそも会いたくもないだろうし……」


妹には母の様子を報告する際に向さんの一件も話していた。
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