婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
向家は歴史ある大資本家一族で、代々地主として地域を守ってきたそうだ。

先祖から引き継いだ土地を守るため、曾祖父の代から興した不動産会社を祖父や父の代で現状に発展させてきたという。

長男の俺を両親は後継者に望んでいた。

小さな頃はそれが当然と思っていたし、疑問もなかった。

けれど成長するにつれ、憧れの飛行機を操縦し、パイロットになりたいと願った。

夢を打ち明けた際、両親は驚いたが反対しなかった。

ただ、会社の将来を考えたとき、迷いが生じた。

そんな俺の心中を見透かしていたのか、年の離れた弟が自分が継ぐと言い出した。

幼い弟にすべてを背負わせる事態を申し訳なく思いながらも俺は自分の夢を叶える道を歩き出した。

高い倍率の中、ブルーライト航空の自社養成パイロットに採用されたときはとても嬉しかった。

羽田空港内のオフィスで副操縦士の一カ月のシフトスケジュールを作成する部署へと配属され、一年半ほど勤務した。

その後一年半近く、基礎訓練を受け必要な免許を取得し、基礎知識や技術習得に励んだ。

それから約一年は副操縦士となるため厳しい訓練を積んだ。

もちろんその中には乗務する航空機の機種の免許取得も含まれる。

同期と励まし合いながら進む毎日の中で家業を顧みる余裕はほとんどなかった。

憧れだけでは乗り越えられない職業だと思い知りながら、ひたすら努力する日々だった。

無事に念願の副操縦士となってもまだまだ未熟で山のように学ぶ事柄は多く、訓練と勉強を続けていた。
< 73 / 160 >

この作品をシェア

pagetop