婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
薄情かも知れないが、もうひとりの大事な心の支えで、再会を願う人に出会ったからかもしれない。


……俺の大事な思い出の女性に。


幼い頃から憧れていた職業に就き、嬉しくも緊張と勉強に明け暮れ、楽しいだけではない毎日を送っていた。

母親に似た俺の容姿はいつの間にか社内外で噂されるようになっていたらしく、広報から知らされた新しい業務に閉口し戸惑った。

目立つのが好きではない俺に上司は断わってもいいと言ってくれたが、引き受けた。


――三年前、大阪国際空港近くの土手で出会った女性に少しでも俺を知って、気づいてもらいたいから。

彼女が動画を見る確証はない。

それでも、なにも行動しないよりずっといいと思った。

ただもう一度、彼女に会いたい。

それだけをずっと、願ってきた。


「……あのときは、本当にありがとう」


小さくつぶやいて、そっと指先で頬に触れた。

伝わる体温に心までも温まる。
< 72 / 160 >

この作品をシェア

pagetop