婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
近づく飛行機に感動する人々の中、硬い表情で空を見つめる姿は目立っていた。

転びかけた体をとっさに支えた後、世間話から自分の話をしているうちに思いがけず、女性の葛藤を知った。

自分でもどうして自分の心の内を先に話したのかよくわからない。

これまで友人にも話さなかった迷いを無関係な誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

彼女はただ正直に短い感想を述べ、真摯に耳を傾けてくれた。

話しているうちに渦巻いていた感情が落ち着いていき、家族になにをどう伝えたいのか整理ができた。

同時に自分にとってなにが一番大切で、どうしたいのかを改めて理解した。

そんな経験は初めてで自分でも不思議で仕方なかった。

そして、誰かに穏やかに話を聞いてもらえる温かさ、背中を押してもらえるありがたさを感じた。

彼女にそんな意図はまったくないだろう。

だけど思い出の少女を彷彿とさせる真っすぐな眼差しに、俺は助けられていた。

さらに彼女の抱える事情と悲しみ、優しさを知り、長くとらわれていた場所から進む一歩をくれた女性の力になりたいと唐突に願った。
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