役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
第一章 馬鹿につける薬はありませんが
「メリッサ。君には申し訳ないのだけれど、僕はジェシカを心から愛しているんだ。片方だけを選べない、罪な僕を許してくれるよね?」

 最近では顔を合わせることも減った夫に珍しく呼び出されたメリッサは、話を聞いて拍子抜けた。
 夫――マルコムが義両親のいる前で堂々と打ち明けたのは、愛人の存在の暴露。見せつけるように隣でべったりとくっついているのは、彼の幼馴染であるジェシカだ。愛らしい容姿の持ち主で、華やかなワンピースドレスを着飾っている彼女に対し、ひっつめた金髪にほつれの目立つ地味な紺色のワンピースを着ているメリッサは、令嬢とは思えないほど見劣りしていた。
 息子が不貞を堂々と宣言したものの、義両親はまったく動揺している様子はない。おそらく以前から知っていたのだろう。
 夫も義両親からも使用人に扱われているが、戸籍上の妻はメリッサだ。何とも言いようのない混沌とした空気に呆れつつ、彼女は鼻の下を伸ばしたマルコムに問う。

「旦那様、それは私と離縁したいという意思表示でよろしいでしょうか?」
「いやいや、話を聞いていたかい? 妻の座は君のまま、ジェシカを僕の新たなパートナーとして受け入れてほしいんだ」
「この国で一夫多妻制度は廃止されています」
「君は相変わらず頭が硬いなぁ。これは、純粋な愛なんだよ。愛を止める法律は存在しない。国を追い出されることも捕まることもないんだから、少しは大目に見てくれないか? 僕はジェシカだけでなく、天涯孤独で可哀想な君のこともまとめて愛してあげたいんだ」
(……気持ち悪っ!)

 喉から出かかった言葉をぐっと飲み込む。
 マルコム・コモンズ公爵子息は、自身の容姿が異性に好まれるものだと自覚している。メリッサも夫が自分に酔いやすい性格だと知ってはいたが、ここまで堂々とされると、呆れを通り越して清々しいまである。
 新しいパートナー? 愛人と何が異なるのか、説明してほしいものだ。

「それに、君が公爵家に嫁いできた一番の理由は、両親が遺した借金の肩代わりだろう? 完済までまだまだかかるんだから、もっと働いてもらわないとね」

 マルコムは見下すようにして彼女を鼻で嘲笑った。
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