役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「カインは自分の証拠をすべて消したが、いずれまた、君の前に現れるだろう。そうなったら――」
「なら、その時に移住の交渉が難しければ、知識だけでも吐かせましょう! あの睡魔の魔法陣、叔父様の書斎にもなかった魔法陣なんです。サーラントのものかしら。あれを応用できれば、快適な枕が作れそうな気がしますわ!」
そう言って今度は羊皮紙を広げると、落書きのような図面を書きながら、新商品の構想を事細かに説明していく。このぐいぐいと押し付けてくるような強引な一面に、アルフォンスは思わず吹き出した。
「殿下? 何かおかしかったでしょうか?」
「いや……君は飽きないなと思っただけだ」
そうだ、彼女はこういう人だった。王家を足に使い、好き勝手に改革を楽しむ辺境伯令嬢。――もう誰も、彼女のことを「貴族潰しの出戻り令嬢」などと揶揄する者はいない。
すると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。許可を得て入ってきたのはジェナだ。
「ご歓談中、失礼いたします。お嬢様に至急、お会いしたいという方がいらしておりまして……」
「あら、誰かしら? 殿下、すみません。今叔父様とクロードが魔物の対応に追われているので手が離せなくて、少し席を外しても?」
「もちろんだ。それにしてお、至急とは、大事じゃないか?」
「イレスト区の工場を任されている方で、春頃に予定されている元公爵領の領地配分についてご相談したいとのことでした。なんでも、ケケ村とクラム果樹園の合同開発をしているコロンとデーツを掛け合わせた新種に兆しがあるようなんです!」
「それは一大事だわ! 殿下、やっぱり一緒にいらしてください。ご意見をいただきたいわ!」
ガバッと立ち上がったメリッサはそわそわした様子でアルフォンスを誘う。
コロンとデーツは遺伝子的に交配が不可能な組み合わせではあるが、土地の魔力の活性化も相まって国内初の新種が生まれる可能性を秘めている。これにはアルフォンスの興味を注がれる。どのみち断っても強引に連れて行かれるのだろう、アルフォンスが立ち上がると、それを見てからメリッサは先に廊下に出た。
「ちょっと、お嬢様! ……ああもう、急がなくても逃げませんって!」
「だってわくわくするじゃない!」
屋敷の中に明るい声が響き渡る。廊下を歩く楽しそうなメリッサに、残されたアルフォンスは眩しそうに目を細めたのだった。
完
「なら、その時に移住の交渉が難しければ、知識だけでも吐かせましょう! あの睡魔の魔法陣、叔父様の書斎にもなかった魔法陣なんです。サーラントのものかしら。あれを応用できれば、快適な枕が作れそうな気がしますわ!」
そう言って今度は羊皮紙を広げると、落書きのような図面を書きながら、新商品の構想を事細かに説明していく。このぐいぐいと押し付けてくるような強引な一面に、アルフォンスは思わず吹き出した。
「殿下? 何かおかしかったでしょうか?」
「いや……君は飽きないなと思っただけだ」
そうだ、彼女はこういう人だった。王家を足に使い、好き勝手に改革を楽しむ辺境伯令嬢。――もう誰も、彼女のことを「貴族潰しの出戻り令嬢」などと揶揄する者はいない。
すると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。許可を得て入ってきたのはジェナだ。
「ご歓談中、失礼いたします。お嬢様に至急、お会いしたいという方がいらしておりまして……」
「あら、誰かしら? 殿下、すみません。今叔父様とクロードが魔物の対応に追われているので手が離せなくて、少し席を外しても?」
「もちろんだ。それにしてお、至急とは、大事じゃないか?」
「イレスト区の工場を任されている方で、春頃に予定されている元公爵領の領地配分についてご相談したいとのことでした。なんでも、ケケ村とクラム果樹園の合同開発をしているコロンとデーツを掛け合わせた新種に兆しがあるようなんです!」
「それは一大事だわ! 殿下、やっぱり一緒にいらしてください。ご意見をいただきたいわ!」
ガバッと立ち上がったメリッサはそわそわした様子でアルフォンスを誘う。
コロンとデーツは遺伝子的に交配が不可能な組み合わせではあるが、土地の魔力の活性化も相まって国内初の新種が生まれる可能性を秘めている。これにはアルフォンスの興味を注がれる。どのみち断っても強引に連れて行かれるのだろう、アルフォンスが立ち上がると、それを見てからメリッサは先に廊下に出た。
「ちょっと、お嬢様! ……ああもう、急がなくても逃げませんって!」
「だってわくわくするじゃない!」
屋敷の中に明るい声が響き渡る。廊下を歩く楽しそうなメリッサに、残されたアルフォンスは眩しそうに目を細めたのだった。
完

