役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「それと、カインは依然として行方不明だ。サーラント王国にも帰っていないらしい」
「そうですか……」

 彼を連行しようと試みたものの、カインの指摘通り、度重なる魔力の消費によって立っているだけで精一杯だった。アルフォンスの制止を聞かずに飛び出した無鉄砲さは、自分でも痛感している。「僕の手には負えないや」と彼が笑った後のことは、よく覚えていない。おそらくカインが睡魔の魔法陣を発動させたのだろう、気付けばアルフォンスに抱きかかえられ、名前を何度も呼ばれていた。

「本当に何もされていないんだよな?」
「されていません。あれから検査もして、何の異常もなかったではありませんか」
「それはそうだが……」

 アルフォンスいわく、コモンズの拘束に時間を取られ、遅れてエントランスに向かった時にはすでにカインもサーライト王国の馬車も立ち去った後で、メリッサがその場に倒れていたらしい。心ばかりにかけられた男性用のコートはカインのものだっただろう。そもそも、冬の寒空に令嬢一人その場に――しかも地面に――寝かせておくとは、紳士としていかがなものか。

「君が倒れているのを見て、俺は心臓が止まるかと思ったんだ。やはり君を一人で行かせなければよかったと後悔したし、カインをひどく恨んだ」
「心配させてしまってすみません、殿下。……でも私、すごく惜しいことをしたなと思って。カインをちゃんと引き止めるべきでした」

 そう言ってメリッサは顔を伏せた。寂しげな表情を浮かべる彼女を見るのが初めてで、アルフォンスは躊躇った。

「……カイン、いい人材だったのに」
「…………んん?」
「だってそうでしょう! 彼の文官としての才能は、王宮内でも高い評価を受けていました! コモンズ家の文書偽装を暴いたのも彼です。王宮も生家も嫌なら、辺境領で内政担当をさせておけばよかった……!」

 ああもうっ! と今にも頭を振り回しそうな勢いで悔しがる。
 カインに対するメリッサの想いは好意などではなく、才能を見初めての勧誘だったことに、アルフォンスは呆れたのと同時に、胸を撫で下ろす。

「殿下、これは国の損失です。カインが戻ってきたらぜひ再雇用のご検討を!」
「できるわけがないだろう。辺境領に身を置かせるなんて以ての外。見つけ次第、サーラント側と検討を重ねて謹慎処分が妥当だ」

 困ったことに、カインはコモンズ家との関わりを証明するものはおろか、王宮内に自分の痕跡もすべて消し去ったうえで行方をくらませた。取調で彼らも対面時は顔を隠していたこともあり、カイン本人だったのかわからないとのことで、確実な証拠は残っていない。

 だから決定打に欠けるとして、王宮では公にせず、内密に調査を進めるようアルフォンスに命じられたのだった。こういった仕事が回ってくるのはよくあることだが、今回の相手は隣国の第三王子だ。下手に地雷を踏めば両国の友好関係にヒビが入る。その前になんとかしなければ。
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