身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 私の両親は10歳の時に離婚した。結婚自体は大恋愛の末に結ばれたものだと父さんを知る人達は声を揃えて教えてくれたけど、私が物心ついた時から関係は冷え切っていた。
 父さんのこだわりが強い職人気質な部分は良い所も悪い所も内包している脆い個所だと思う。母さん結構寂しがり屋で気が強い所があったからか、何度も言い争いに発展し、最終的には性格の不一致により離婚を選んだ。
 そんな2人を間近で見てきた私はある考えへと至る。

 ――結婚はしない。

 こうなるくらいならいっそ結婚なんてしない方がまし。子供が欲しくなったらその時はどうにかして結婚以外の選択肢を選べばいい。そう考えている。
 優しい空気を味わいながら自分の考えを思い出し振り返っていた所で、からからと扉の鐘が鳴る音がした。

「ふう。ここに来るのも久しぶりだなあ。詩織ちゃん元気にしてた?」
「あ……!」

 私の目の前にいるのは黒いスーツを着用した30代くらいの男性。スラリとした長身で茶髪のウェーブがかったツーブロックヘアをしている。口元はにやりと口角が上がり、嫌らしさをこれでもかと言う位に演出していた。
 彼の名前は才川流(さいかわながれ)。新興の観光企業グループ、才川グループの執行役員で御曹司に当たる人物だ。シュクレがあるビルをはじめ周辺の土地を所有しているのも彼である。この所有に関してもいざこざがあったのだが。
 なんでまた来たの。そう言おうとしてしまうのをぐっとこらえ、目を合わさずにいらっしゃいませ。とだけ挨拶する。

「ふぅん。詩織ちゃん俺の事無視するんだ~。小学校から大学までずっと一緒だったのに。幼馴染を無視するなんて冷たいね」

 つかつかと早歩きで歩み寄られると、流に下顎をぐいっと掴まれる。

「っ!」

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