身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 私の父親・伊豆口遼太郎はシュクレの店主。世界的にも有名なケーキ職人で、幼少期から憧れている人物だ。少々コワモテで仏頂面で、ごつごつとした不格好な手を持つ彼が、繊細で艶のある、ほどよい甘さのケーキを生み出す姿はまさに繊細な菓子職人らしい。
 父さんは目立つ事を嫌い、このビル街に隠れるようにしてひっそりと店を営んでいる。

「そうねえ。遼太郎さんの作るケーキ私とっても好きよ。また伝えて置いて。お会計はクレカで」
「勿論でございます……! はい。確かに会計確認いたしました」
「ありがとう。クレカ最近登録したんだけど結構使い勝手いいわねえ。ふふっ。じゃあまた来るわね」

 女性の笑顔につられて私も笑みを浮かべてしまった。それにしてもこの朗らかで温かい、まるで春の陽気のような店の空気は本当に大好きだ。
 そしていつかはお父さんみたいな職人になりたい。

 ちらりとレジから後ろにある厨房に目を通すと、焼きあがったシュークリームの生地の中へカスタードクリームを注入している父さんの姿が見える。彼の作るシュークリームはジャンボサイズのパイシューで、カスタード単独とカスタード&ホイップのダブルクリームの2種類。これも父さんのこだわりから生まれたものだ。
 このこだわりの強さは、私も痛い程身に染みている。


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