身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 エントランスホールで久々に見た姉さんは、黒地に白いフリルがたくさんあしらわれたゴシックロリィタ服に身を包んでいた。頭には服と同じ意匠のボンネットを被っていて見るからにお姫様らしい。

「姉さん! 久しぶり……!」
「詩織! 元気にしてたようで良かった……!」

 まだ全体的にむくみの残る姉さん。その手には、シュクレのロゴが入った白い紙袋が大切そうに握られている。

「姉さん、それは何?」
「これ、父さんが持って行けって。クッキーとフィナンシェが入ってる」
「えっ? もしかして差し入れ?」

 姉さんから紙袋を受け取ると、ずっしりとした重さを感じる。
 紙袋の中に左手を突っ込んでみると、確かに透明なガラスの小瓶にチョコレートチップが混ざったクッキーが収まっていた。
 
「ほんとだ……美味しそう」
「てかさ佑太さんとか大丈夫なの? 実はさ。さっき病院で聞いたんだ。近くで新幹線の事故があって、患者が大量に運び込まれてきてるって……」
「え?」

 ひょっとしたらその応援に佑太さんは向かったのか。姉さんが「知らないの?」と目を丸くさせながら白いケースに収まったスマホの画面を見せてくる。

「ほんとだ……『都内で新幹線の脱線事故が発生。死傷者100人超えか』って……! すごい大事故じゃん……!」
「しかも場所は翠総合病院の近くなんだよね。なんか騒ぎが起こってるなと思ったら。うちの先生も、もしかしたら応援行ってるかも」

 佑太さんは大丈夫なのか。心配だし、しばらくは帰ってこられないかもしれない。
 夜食を持っていきたいけど、邪魔する訳にもいかないので迷ってしまう。

「どしたの、詩織」
「姉さん、あのさ……こういう時、佑太さんの為に何かしてあげられる事、ないかな?」
< 56 / 91 >

この作品をシェア

pagetop