身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 腕組みをしている流は口元こそ吊り上がってはいるものの、目は全く笑っていないし光も差し込んでいない。すぐに視線を逸らしたがバレてしまったのか、ふふっと怪しい笑いが聞こえて来る。

「早く売り上げ代を収めてほしいと? 先月分は既にお支払いしたはずですが」
「いやあ、足りなくなってしまってねえ。遼太郎さん、くどいようですけど、今の所有者は俺なんです。わかりますぅ?」

 足りなくなってしまった。なんて言い訳もはやお金を無心するとしか思えない誠意のない言葉であるのは明らかだ。 

「あ~たいして売り上げあげてないから払えないんでしょ?」
「は?」
「だってそうじゃないですか。この店に長蛇の列が並んでいるなんて見た事がない。味だってうちのパティシエの方が上だ。こんな店に価値なんて無い」

 流の言葉が身体の奥まで瞬時に行き届くのと、腹の底から怒りが炎となって燃え滾りはじめたのがほぼ同時だった。本当になんなんだこの男は。あり得ない! 

「バカにしないでください!」

 両手の拳をぎゅっと硬く握りしめ、混み上げた怒りを全てぶちまける。

「お父さんをバカにするなんて絶対に許さない!」

一度湧いた怒りは脳天を貫く勢いで駆け抜けては止まらない。

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