身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 満足そうな笑みを浮かべている辺りお世辞とかではなさそうだ。これは後で父さんにも教えて置こう。

「そういえば、翠先生って好きな人がいらっしゃるって聞いたわ」
「えっそうなの?」

 右手前にいる老いた女性達がそうひそひそ話しているのが聞こえて来る。好きな人? 一体どういう事だろう……。

「噂だと、有名企業のご令嬢らしいって聞いたわよ」
「ほんと? 翠先生ってあの総理大臣のお孫さんだものねえ。そりゃあ良い所のお嬢さんじゃないと釣り合わないわよぉ」

 ずきりと胸の奥が痛んだ。まるで包丁でぐさりと刺されたかのよう。彼女達は何にも知らないのはわかりきっているが、それでも痛みは消えてくれないし、むしろ増すばかり。
 階段から突き落とされたかのような私とは対称的に、商品は飛ぶ勢いとまではいかないが順調な流れで売れていく。痛みを打ち消すようにあとで姉さんに追加の納品をお願いしないといけないかもしれないなと考えていた時、ひとりの若い女性がかつかつとハイヒールを鳴らしながらやってきた。

「う~ん……」

 黒いタートルネックに白いタイトなミニスカート。ハイヒールの色は赤でワンレンなロングヘアはまさにお金持ちの女性と言った具合だ。
 艶のある赤いリップも、照明の光に照らされて高貴さを演出している。
 
「いらっしゃいませ」

 彼女からの返答はない。ぱっと見どの商品を買うか迷っているようには見える。
 ここは一旦静かにしておいた方がいいかな? しばらくすると若い女性は私の元へと近寄って来た。

「えっと……お姉さん。ちょっといい?」
「はい、なんでしょう?」
「プレゼント用のお菓子、何がいいか考えていたんだけど……おすすめってある?」

 こうして話してみるとどこか顔全体が引きつっているような、こわばっているような雰囲気は少しだけ感じられた。

「ああ、それでしたら焼き菓子などはいかがでしょう?」
「いいわね。ケーキも一緒にしていい? すぐにでもお届けしたいの。これから結婚の話をしにいかなくちゃいけないから」
「かしこまりました」

 マフィンを2つ。そしてショートケーキを1つと注文を受け、白い箱に保冷剤と共に詰めていく。
 それにしても結婚の話なんて……翠総合病院ではあるあるなのかな?

「このケーキ、翠先生は気に入ってくださるかしら……?」
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