極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~

*2章* 交際0日の仮初結婚

 木漏れ日のさなかで、千秋くんはゆっくりと立ち上がった。そうして、私が拒まないことを確かめてから、丁寧に手を繋いだ。

 千秋くんは、私と手を繋いだままどこかに電話をした。すると、ややあって高級そうな黒塗りの車がやってきた。

「随分急な呼び出しですね、CEO?」

 車から出てきたのは、きっちりとスーツを着こなした男のひと。年齢は、多分千秋くんと同じくらい。

 丁重な言葉遣いとは裏腹に、気軽な態度で千秋くんと向かい合う。

「束の間の逢瀬を切り上げてきました。貸しにしてよろしいですね?」

「ああ……それは、悪かった」

 スーツの彼は、すまなそうに顔をしかめた千秋くんの肩を、ぽんと叩いた。そうして、にこやかな表情で私に向き合う。

「初めまして、高峰(たかみね)綾人(あやと)と申します。久遠千秋の秘書を務めています」

 にこやかだけれど、ぴんと背筋が伸びるような怜悧な笑い方。

「宮野紗夜香です」

 私がおずおずと名乗れば、高峰さんは胸の前に手を当てて会釈をした。
 美しい所作で身を起こした高峰さんは、千秋くんへ視線を向ける。

「で、俺たちを至急で呼び出してどこへ?」

 車の中では、初老の運転手さんが私たちを待っている。

 千秋くんは、

「区役所へ」

 と、短く答えた。

 そうして、私からバッグを引き取って、車へとエスコートしてくれた。
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