極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
私の目を真っ直ぐに見つめて、彼は告げる。
「婚姻は、個人と個人の意思で結ばれるものです」
色素の薄い瞳。だけど――強い意志を宿す瞳。
「当人たちの意思の前で、その他の事象は些末な事柄に過ぎない」
真摯な声音で、千秋くんは続ける。
「俺は、そう信じています」
彼の言葉は、私の心まで真っ直ぐに届く。
彼が示してくれた誠意を、信じられないとは思わない。
だけど――このまま、彼のプロポーズを受け入れていいとも思わない。
「意思と言うなら……私は、まだ」
揺らめく眼差しを、彼の瞳に合わせる。
「まだ……私は千秋くんを好きじゃない」
そう言った途端、高峰さんが沈痛な面持ちで眉間に手を当てた。
ぽん、と高峰さんに肩を叩かれた千秋くんは――けれど、一切気落ちしていなかった。
「――わかりました」
ふっ、と口の端を上げた千秋くんは、姿勢を正して私に向き直る。
「では、こちらをお渡ししておきます」
千秋くんは、丁寧に畳んだ婚姻届を私に差し出した。
「いつでも、サインをしてください」
目を見ひらく私に、彼は畳みかける。
「いつか――俺のことを好きになってくれたなら」
彼の強気な眼差しに気圧されて、婚姻届を受け取った。そうしたら、彼は王子様みたいに私に手のひらを差し出す。
「俺たちのマンションに帰りましょう」
そうして、薄い笑みをはらんだ声音で続けた。
「今はまだ……仮初の結婚生活ですが」