極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
「……ねえ、じいや」
車窓を流れてゆく、雨上がりの都心の街並み。そこから視線を外して、運転するじいやに話しかける。
「紗夜香さんに、もう一度結婚を申し込もうと思うんだけど」
「そうですか」
「しつこいと思われるかな」
じいやはしばらく黙り込んだ。久遠グループに長年仕えるじいやが、本当は俺たちの関係に懸念を抱いていることはわかっている。
それでも、逡巡するような沈黙ののちに、じいやは言った。
「千秋さまのお心が届くことを、わたくしは願っております」
「……ありがとう」
俺は柔らかな気持ちで微笑んで、窓に視線を戻す。
すると、
「――じいや、止めて!」
歩道の横の自転車専用車線を走っていた自転車が、大きく転倒した。