ながされて、絆されて、ふりむいて
わたしが手を止めたのと同時、いつもは静かな人事部フロアの空気も少しざわめいた。それもそのはず。だってその人物はわたしとおなじく二年目の、超若手。
それに、人事部としては彼をどう育てていくか営業部とかなり打ち合わせをしてきた経緯もある。
茅野凪、その名前を不意に聞いて頭の中に自然と浮かぶ。
〝──花鈴、おいで〟
凪がわたしをやさしく呼ぶ声、どこまでも温かな表情、あまく触れる手のひら、熱をうつす視線──思い出して、ぽわっと頬があつくなる。きゅんと、ぎゅん、同時に迷い込んでくる。ぶんぶんと頭を振って熱さにはふらふら飛んでいってもらう。