ながされて、絆されて、ふりむいて
だめだめ児玉花鈴。リンノアのなかで茅野凪はただの同期。それもあまり接点のない同期のふりをしているんだから。
あくまでも「茅野くん」と「児玉さん」だから。
「国内部の茅野くんって営業として単独デビューして2ヶ月くらい?」
「うん、それくらい。しかもデビューも半年以上前倒しでしょ?優秀すぎて、研修日程一人だけ変更して一刻も早く独り立ちさせろって部長の圧が強かったとか」
通路を挟んで向こう側の人事部研修チーム数人の声が聞こえてきた。今しがた終了した、表彰アナウンスで響いた茅野凪について。
ちょうど夏くらいに、会話の主役となっている彼から『俺のせいで部長が人事と喧嘩してるらしいんだけど、実際どうなの?』と聞かれて『喧嘩はしてないけど、まあ』とふわふわな回答をした記憶がある。
「そうよ〜、うちって基本は三年目の春から夏にかけて独り立ちなのに、二年目の夏なんて前代未聞よ。前例がなくて稟議の承認取るのも大変だったんだから」
「あっそっか、三戸さん、去年の新卒の研修カリキュラム作ってましたもんね」
今日、わたしを置いてはやめに家を出たのは表彰があったからか、と納得する。普段も凪のおうちから出社する日は時間差でマンションから出るものの、今日は1時間もはやく出ていったのだ。
あさ、一緒にいられる時間が少なくてしゅんとしたんだからね。知らないと思うし、バレないように徹底してるのはわたしのほうだけれど。