ながされて、絆されて、ふりむいて
まるっこくてきゅるきゅるな目をキラキラと輝かせる涼名ちゃんは、無類のイケメン好きだと有名だ。入社してから現在までずっと凪推しらしい。
ただし「私と付き合う推しは解釈不一致!」とのことで、本当に単なる"推し"なのだと(あと、彼氏がいるらしい)。
それに涼名ちゃんの推しは他にもたくさんいるのだとか。たとえば、事業本部の名波さんとか。企画広報部の名波大和さんといえば、関わった女性社員から一度は必ず好意を持たれるなんて噂もあるほど。そして抜けられないとか、なんとか?
興味の中心が茅野凪であるわたしに、ほかのひとの情報を仕舞っておくフォルダは存在せず。あいまいが散らばって格納されていない。
「……ほんと、すごいよね。でも茅野くんは入社時研修以来ほとんど話してないよ」
「え〜〜、せっかく同じビルにいるのにもったいないです!4階まで降りるだけですよ!?てか、9階に来てもらえばいいのに!」
「茅野くんほどの人気社員はわたしなんかとは話してくれないの。関わりなんて蜘蛛の糸レベル」
大嘘だ。これは真っ赤、真紅の嘘。
関わりがないどころか今日も朝ごはんを一緒に食べた。凪はいつもわたしのためにジャムとマーガリンとチョコレートを選ばせてくれる。今日はいちごジャムの気分だった。
「1時間多く働くの確定してるから、チャージさせて」といってきますのキスをちょっぴり長くした。
わたしと彼はいつだっていちばん近くて──遠い。