ながされて、絆されて、ふりむいて


▫︎◻︎



茅野凪は、一生だれかの視線の先に存在するような人間だと思う。


100人ほどの席が用意されている講義室という名の箱は、ありがたいことに多くの学生さんで埋め尽くされた。


進行と、会社概要を話すわたしに対してでも真面目にまっすぐな視線を向けてくれていたけど、凪がマイクを手にして音を発し始めた瞬間、講義室の空気が変わったような気がした。


この人の話を聞きたい、という純粋なきらめきと、空気を揺らした柔らかく落ち着く声色は空間を掌握する力があった。


わたしはあまり、人前に立つという経験をしてきていない。けれど凪はこれまで、キャプテン、学級委員、そういう人の上に立つ経験を学生時代から当たり前にしてきたひとだ。経験がそうさせるのか、元の素質なのか、たぶん、どっちも。


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