ながされて、絆されて、ふりむいて
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秋と冬の間を通り抜ける緩やかに冷たい風は頬を少しだけちくりと刺す。心地よい気温から肌寒さに表情を変えそうな季節だ。
わたしがお手洗いに行っている間に会計を済ませていた王道の気遣いを受けてから「送っていくよ」とまたも王道を受け取ってしまっている。
わたしがゆっくりお酒を二杯飲んでいる間に、名波さんは何杯飲んだかわからない。
7センチのヒールで、気をつけていないとふらりと重力に負けてしまいそうなわたしとは対称に、酔っている様子を微塵も感じさせない。
毎年訪れる過ごしやすい秋の夜、最寄駅。イレギュラーは隣を歩く人物だった。「花鈴のとなりは俺の特等席」と恥ずかしげもなく告げる彼ではない。
「考えごと?」
「……えっ?」
見上げないと届かない、結びつかない視線。20年以上となりを占領してきた彼よりも、少しだけ高い。