ながされて、絆されて、ふりむいて



「茅野、もしかして気づいてて代打断った?」


「はい。花鈴と名波さんが二人でいるかもしれないのに、美味しく酒なんか飲めねーわ」


「へえ」



後ろから抱きしめられて、腕のなかにおさまっている。


名波さんがどこか満足そうに口角を操っていることを確認したのと同時、強く込められた力からゆらりと解放された。



「こないだの答え。花鈴はビルの中だけじゃない。この世界で一番可愛いと思ってます」


「そ。思った以上に溺愛してんじゃん?」


「はい。可愛くて仕方ないし」



こないだ、ってなんの話。

前後がわからなくたって、いま、凪が、名波さんに"花鈴が可愛い"と伝えているのは確かで。


いつもいつも、飽きるくらいにわたしに伝えてくれる魔法の言葉だ。すきのかわりに与えられるから、呪いの言葉にも成り代わる。




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